■2005年度事業報告書 平成17年度「和い輪い人権学習会」は、7月から2月まで、12月を除く毎月1回(計7回)実施されたワークショップ形式の参加型人権学習会で、京都市の主催事業。この事業に関して、「ネットからすま」は次の3項目につき委託契約を締結し、参画した。 ・学習会事業の企画及び運営に関すること ・学習会事業の出演者の派遣及び連絡調整に関すること ・そのほか、学習会事業の全体の進行に関して必要なこと 具体的には、各回のテーマ設定、ワークショップの内容・構成を「ネットからすま」の担当職員が企画し、また同職員は各回の進行役(ファシリテーター)も務めた。京都市文化市民局人権文化推進課の担当職員らと綿密な協議を重ねながら、毎回創意工夫をこらしたワークショップを実施した。「『隣人』を発見する」を全回通じてのメインテーマに据え、参加者がアクティビティに積極的に参加し、互いの意見を尊重し、傾聴し、自ら実践し、考えることを通して、さまざまな人権課題に気づき、人権感覚を豊かにしていくことをねらいとした。 たいへん好評で、参加者からは「次年度以降も参加したい」「友人に参加を勧めたい」という声も多く聞かれた。また、新たな交友関係が生まれ、人権を考える人の輪の広がりにも寄与できたものと思われる。本事業は、平成18年度も実施され、「ネットからすま」は引き続き、ほぼ同様の形態で参画する予定である。
2.今村家文書[近代区分]調査・研究事業 京都市からの委託を受けて実施した事業。 京都市東山区の旧家「今村家」には、中世・近世・近代にわたる厖大な史料が保存されている。特に注目すべきは、現・崇仁地区など近隣の被差別部落との関連を示す文書が多数含まれている点で、「今村家文書」は、京都における部落史を知る上で、きわめて高い価値を有すると考えられる。部落史を正しく伝えることは人権啓発にとって最重要テーマであるとの観点から、京都市は、人権啓発事業の基礎資料としての「今村家文書」調査・研究を、NPOネットからすまに委託したものである。 なお、文書全体を時代ごとに「中世」「近世T」「近世U」「近代」に区分し、2002年度は「中世」区分の調査・研究を、2003年度は「近世T」区分(1601年〜1771年)の調査・研究を、2004年度は「近世U」区分(1868年〜)の調査・研究をまとめた。2005年度は、残る「近代」区分の調査・研究をまとめた。
3.歴史研究会「大仏妙法院と六条村」 「今村家文書」調査・研究に併せ、崇仁地区(旧・六条村)と支配寺院であった妙法院の関係についての歴史研究会を開催。
4.「うちな〜噺家
藤木勇人のゆんたくライブ」 一般市民向けに演劇公演を実施した。 藤木勇人氏は、沖縄を代表するエンターテイナーで、最近はNHKの連続ドラマへレギュラー出演するなど全国的に知られている。軽妙な沖縄言葉(ウチナーグチ)を駆使して“沖縄”を表現する芸風は多くの人々に愛されている。今回「ネットからすま」では、沖縄文化の豊かさ、沖縄の経てきた歴史の重さ、沖縄の現在抱えている課題等を、楽しみながらできるだけたくさんの人々に知っていただくため、独自事業として、藤木勇人氏を沖縄から招き、「ゆんたくライブ」を企画・上演した。 「ゆんたく」とはウチナーグチで「おしゃべり」を意味する。つまり藤木氏の「ゆんたくライブ」は、漫談風のおしゃべりをたっぷり盛り込んだ一人芝居のライブ。当日のステージでは、前段の「ゆんたく」に加え、沖縄の若者がヤマト(日本本土)に来て向き合わざるを得ない言葉のギャップをモチーフにした「東風平朝成の青春」、沖縄の離島の“沖縄戦”体験を粛々と語る「白砂の想い」の2作品を上演した。
5.ハンセン病市民学会シンポジウム「旧植民地・旧占領地のハンセン病問題」の後援 「ハンセン病市民学会」の主催事業であるシンポジウム「旧植民地・旧占領地のハンセン病問題」に後援団体として協力した。 「ハンセン病市民学会」は、ハンセン病問題検証会議の報告を通して明らかになったハンセン病をめぐる諸問題の解決をめざすべく、広く市民に呼びかけて設立された。 今回、日本が植民地支配下の朝鮮・台湾に設立したハンセン病療養所における人権侵害等の問題を明らかにするためのシンポジウムが京都で開催されることとなり、「ネットからすま」が後援団体として参画することとなった。旧植民地のハンセン病療養所は戦後も引き続き、韓国政府、台湾政府によって運営されてきたが、高齢化した入所者の中には、日本統治時代の隔離政策によって入所を強いられた人が少なくない。旧植民地のハンセン病問題は、過去の問題ではなく、戦後補償に関わる問題であり、日本国内のハンセン病問題と通じ合う人権問題である。そうした観点から、「ネットからすま」も後援団体としてシンポジウム開催に協力し、また、事務局から渡辺が、ハンセン病に対する市民意識についての報告を行った。
6.女性解放運動資料編纂事業 「京都市男女共同参画講座受講生参考資料(女性解放運動関係)」収集・調査事業について、財団法人京都市女性協会からの委託を受けてこれを行った。この事業は2ヶ年にわたる予定で、平成17年度はその1年目であった。 1970年代から80年代にかけての女性解放運動、いわゆる「リブ運動」については、一部で学術的視点からの評価がなされてはいるものの、当時の社会的偏見等によって、いまだ正当な社会運動史としての位置付けが確立しているとは言いがたい。全国で繰り広げられた運動の資料を通して、当時の女性たちの先駆性や多様性、真摯な在りようを明らかにすることが必要である。そのための資料収集・編纂を行った。 14 事業Fの実施に関する事項
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