■2005年度事業報告書

 1.平成17年度「和い輪い人権学習会」

平成17年度「和い輪い人権学習会」は、7月から2月まで、12月を除く毎月1回(計7回)実施されたワークショップ形式の参加型人権学習会で、京都市の主催事業。この事業に関して、「ネットからすま」は次の3項目につき委託契約を締結し、参画した。

・学習会事業の企画及び運営に関すること

・学習会事業の出演者の派遣及び連絡調整に関すること

・そのほか、学習会事業の全体の進行に関して必要なこと

 具体的には、各回のテーマ設定、ワークショップの内容・構成を「ネットからすま」の担当職員が企画し、また同職員は各回の進行役(ファシリテーター)も務めた。京都市文化市民局人権文化推進課の担当職員らと綿密な協議を重ねながら、毎回創意工夫をこらしたワークショップを実施した。「『隣人』を発見する」を全回通じてのメインテーマに据え、参加者がアクティビティに積極的に参加し、互いの意見を尊重し、傾聴し、自ら実践し、考えることを通して、さまざまな人権課題に気づき、人権感覚を豊かにしていくことをねらいとした。

 たいへん好評で、参加者からは「次年度以降も参加したい」「友人に参加を勧めたい」という声も多く聞かれた。また、新たな交友関係が生まれ、人権を考える人の輪の広がりにも寄与できたものと思われる。本事業は、平成18年度も実施され、「ネットからすま」は引き続き、ほぼ同様の形態で参画する予定である。

 

事業名

平成17年度 和い輪い人権学習会

実施日時・内容

 

 

 

7月14日 第1回 世界は「隣人」との出会いに満ちている

 〜立場の違う様々な人と向き合うために〜 *入門編

8月11日 第2回 聴き取りにくくても、コトバはコトバ

 〜言語障害をもつ人とのコミュニケーション〜

9月8日 第3回 お隣さんって、ほんとに日本人?

 〜アイヌ、沖縄人、在日コリアンのいる社会〜

1013日 第4回 男/女になりたいと思ったことってありませんか?

 〜通念としての“男/女の在り方”を疑ってみよう〜

1110日 第5回 「病へのまなざし」が傷付けてきたも          のは…

 〜今、ハンセン病、水俣病を改めて見つめ直す〜

1月12日 第6回 職業に差別なし、とはいうけれど…

 〜私たちの職業観をもう一度振り返ってみよう〜

2月24日 第7回 むすびに…むすぶ隣人との絆!

 〜ファシリテーター(進行役)の体験と修了式〜

実施時間

いずれも10時〜16

実施場所

京都市女性総合センター ウィングス京都

従事者の人数

「ネットからすま」からは担当職員1名が参画

受益対象者の範囲及び人数

市民

全7回すべてに参加することを原則として募集し、約50名からの応募を得た。実際は毎回平均して3540名が参加。

 

2.今村家文書[近代区分]調査・研究事業

京都市からの委託を受けて実施した事業。

京都市東山区の旧家「今村家」には、中世・近世・近代にわたる厖大な史料が保存されている。特に注目すべきは、現・崇仁地区など近隣の被差別部落との関連を示す文書が多数含まれている点で、「今村家文書」は、京都における部落史を知る上で、きわめて高い価値を有すると考えられる。部落史を正しく伝えることは人権啓発にとって最重要テーマであるとの観点から、京都市は、人権啓発事業の基礎資料としての「今村家文書」調査・研究を、NPOネットからすまに委託したものである。

なお、文書全体を時代ごとに「中世」「近世T」「近世U」「近代」に区分し、2002年度は「中世」区分の調査・研究を、2003年度は「近世T」区分(1601年〜1771年)の調査・研究を、2004年度は「近世U」区分(1868年〜)の調査・研究をまとめた。2005年度は、残る「近代」区分の調査・研究をまとめた。

 

事業名

今村家文書(近代区分)調査・研究

事業内容

今村家文書(近代区分)の各古文書につき、年代・概要別分類、表題設定、表装調査、本文読み下し等の調査・研究を行う。その上で報告書を作成、人権啓発の基礎資料として展示事業等への活用に備える。

 

 

3.歴史研究会「大仏妙法院と六条村」

「今村家文書」調査・研究に併せ、崇仁地区(旧・六条村)と支配寺院であった妙法院の関係についての歴史研究会を開催。

 

事業名

ネットからすま歴史研究会「大仏妙法院と六条村」

事業内容

被差別部落の歴史への認識を深めるべく崇仁地区と妙法院の関係について、本NPO理事の山内政夫を発題者に研究会を開催。

実施日時

200530日 13301530

実施場所

京都市崇仁コミュニティセンター

従事者の人数

2名

受益対象者

市民  参加者=22

 

4.「うちな〜噺家 藤木勇人のゆんたくライブ」

 一般市民向けに演劇公演を実施した。

 藤木勇人氏は、沖縄を代表するエンターテイナーで、最近はNHKの連続ドラマへレギュラー出演するなど全国的に知られている。軽妙な沖縄言葉(ウチナーグチ)を駆使して“沖縄”を表現する芸風は多くの人々に愛されている。今回「ネットからすま」では、沖縄文化の豊かさ、沖縄の経てきた歴史の重さ、沖縄の現在抱えている課題等を、楽しみながらできるだけたくさんの人々に知っていただくため、独自事業として、藤木勇人氏を沖縄から招き、「ゆんたくライブ」を企画・上演した。

 「ゆんたく」とはウチナーグチで「おしゃべり」を意味する。つまり藤木氏の「ゆんたくライブ」は、漫談風のおしゃべりをたっぷり盛り込んだ一人芝居のライブ。当日のステージでは、前段の「ゆんたく」に加え、沖縄の若者がヤマト(日本本土)に来て向き合わざるを得ない言葉のギャップをモチーフにした「東風平朝成の青春」、沖縄の離島の“沖縄戦”体験を粛々と語る「白砂の想い」の2作品を上演した。

 

事業名

うちな〜噺家 藤木勇人のゆんたくライブ

事業内容

沖縄を代表するエンターテイナー、藤木勇人氏による漫談風一人芝居の企画・上演。(独自事業)

実施日時

20051210日 昼の部 14時〜16

        夜の部 19時〜21

実施場所

京都府部落解放センター 4階ホール

従事者の人数

6人

受益対象者の範囲と人数

市民

昼の部参加者=68名  夜の部参加者=81

参加券料

大   人 当日 2,500円 前売 2,000

高校生以下 当日 2,000円 前売 1,500

協賛

関西沖縄文庫

 

5.ハンセン病市民学会シンポジウム「旧植民地・旧占領地のハンセン病問題」の後援

 「ハンセン病市民学会」の主催事業であるシンポジウム「旧植民地・旧占領地のハンセン病問題」に後援団体として協力した。

 「ハンセン病市民学会」は、ハンセン病問題検証会議の報告を通して明らかになったハンセン病をめぐる諸問題の解決をめざすべく、広く市民に呼びかけて設立された。

 今回、日本が植民地支配下の朝鮮・台湾に設立したハンセン病療養所における人権侵害等の問題を明らかにするためのシンポジウムが京都で開催されることとなり、「ネットからすま」が後援団体として参画することとなった。旧植民地のハンセン病療養所は戦後も引き続き、韓国政府、台湾政府によって運営されてきたが、高齢化した入所者の中には、日本統治時代の隔離政策によって入所を強いられた人が少なくない。旧植民地のハンセン病問題は、過去の問題ではなく、戦後補償に関わる問題であり、日本国内のハンセン病問題と通じ合う人権問題である。そうした観点から、「ネットからすま」も後援団体としてシンポジウム開催に協力し、また、事務局から渡辺が、ハンセン病に対する市民意識についての報告を行った。

 

事業名

ハンセン病市民学会シンポジウム「旧植民地・旧占領地のハンセン病問題」

主催団体

ハンセン病市民学会

後援団体

NPO法人京都人権啓発センター・ネットからすま

事業内容

挨拶    訓覇 浩(ハンセン病市民学会共同代表)

挨拶    中村尚司(ネットからすま理事長)

基調報告  金平輝子(元ハンセン病問題検証会議座長)

活動報告@ 浜崎眞実(カトリック神父)

活動報告A 渡辺 毅(ネットからすま事務局)

ビデオ上映 「ソロクト・楽生院 日本が残したハンセン病隔離政策」

シンポジウム

パネリスト 金 泰九(長島愛生園入所者)

      藤野 豊(近現代史研究者)

      大槻倫子(弁護士、ソロクト・台湾訴訟弁護団)

コーディネーター

      原田恵子(ハンセン病支援センター)

実施日時

2006年A月25日 1330分〜17

実施場所

京都市国際交流会館 イベントホール

従事者の人数

3人

受益対象者

市民  参加者=90

 

6.女性解放運動資料編纂事業

 「京都市男女共同参画講座受講生参考資料(女性解放運動関係)」収集・調査事業について、財団法人京都市女性協会からの委託を受けてこれを行った。この事業は2ヶ年にわたる予定で、平成17年度はその1年目であった。

1970年代から80年代にかけての女性解放運動、いわゆる「リブ運動」については、一部で学術的視点からの評価がなされてはいるものの、当時の社会的偏見等によって、いまだ正当な社会運動史としての位置付けが確立しているとは言いがたい。全国で繰り広げられた運動の資料を通して、当時の女性たちの先駆性や多様性、真摯な在りようを明らかにすることが必要である。そのための資料収集・編纂を行った。

 

14 事業Fの実施に関する事項

事業名

 

平成17年度京都市男女共同参画講座受講生参考資料(女性解放運動関係)収集・調査事業

事業内容

・女性解放運動に関する資料の収集

・目録作成

・保管・閲覧可能状態へのファイリング

・分析・評価を論文としてまとめる

*立命館大学大学院先端総合学術研究科・立岩真也ゼミの協力・アドバイスを受ける

調査・研究日程

2006年2月〜2006年3月

従事者の人数

1人